長崎県諫早市に出来た 大型ゴミ処理場の懸念

(敬天新聞令和8年2月号 1面)



広域化の是非

 長崎県諫早市に、県央・県南地区の可燃性一般廃棄物を処理する広域施設「県央県南クリーンセンター」がある。

この施設は、「県央県南広域環境組合」が運営する施設で組織全体の責任者(管理者)は、構成している4市(島原市、諫早市、雲仙市、南島原市)の中から諫早市の大久保潔重市長が選任されている。日常的な運営や維持管理業務については、(株)グリーンパーク長崎県央県南(川崎重工業グループ)に委託されている。

弊紙は、令和4年5月号で、このクリーンセンターの老朽化に伴い、新たな施設を建設するために行われた「第2期ゴミ処理施設整備・運営事業」の一般競争入札に関して、疑義を呈する記事を掲載した事がある。

現在その第2期ゴミ処理施設の建設工事は進行中で、間もなく完成予定だ。これで県内でも最大級の広域処理体制が本格的に動き出すことになる。

老朽化した焼却炉の更新、ダイオキシン対策をはじめとする環境基準の厳格化、そして人口減少に伴う財政制約など、様々な要因を背景に、ゴミ処理の広域化は全国的な潮流となっている。

単独自治体で高性能焼却施設を維持することが難しくなった以上、広域連携は現実的であり、避けて通れない選択でもある。
しかし、施設が完成したからといって、ゴミ処理行政の課題が解決したわけではない。むしろ、本当の課題はここから始まると言っても過言ではない。

今回のクリーンセンターは、あくまで可燃性一般廃棄物を対象とするもので、不燃物や産業廃棄物は受け入れ対象外である。また、各家庭からのゴミ収集、分別、集積については、従来どおり各市町の責任のままだ。住民の生活に直結する「集積」「運搬」という工程は、広域化によってむしろ負担が増すことにも成りかねない場合もある。



長崎県諫早市にある県央県南クリーンセンターHPより



立地と安全面

 とりわけ問題となるのが、ゴミ集積場の立地と、そこへ向かう交通動線である。

南島原市では、深江町・布津町が自町内の埋立地に集積施設を整備する一方、有家町から加津佐町までの広いエリアのゴミを、南有馬町の干拓地に隣接する糞尿処理工場敷地内に集約する計画が示されている。

この「場所選定」については、率直に言って不安を覚えざるを得ない。

国道から集積場への進入口は狭く、カーブもきつい。大型トラックが出入りするには十分な余裕があるとは言い難く、運転には相当な注意が必要だ。敷地へ向かう道路も幅員が限られ、対向車とのすれ違いが容易でない箇所がある。さらに、片側は川に面しており、雨天時や夜間、霧の発生時などには事故リスクが高まる。

現在でも糞尿処理施設への車両出入りがあるが、ここにゴミ集積場が設けられれば、収集車や大型搬送車の往来は確実に増える。騒音や振動、排ガスの問題だけでなく、交通事故という取り返しのつかない事態を招く可能性も否定できない。

これは決して南島原市だけの特殊な事例ではない。全国各地で、既存の処理施設や人目につきにくい場所の「空き地」を活用する形で、十分な検討がなされないまま集積場が設けられ、後になって住民とのトラブルが顕在化している。

「なぜこの場所なのか」「本当に安全なのか」という疑問が、計画段階で十分に共有されないまま進められるケースは少なくない。

行政にとっては、土地取得費を抑えられ、管理も一元化しやすいという「効率性」が魅力なのだろう。しかし、ゴミ処理は効率だけで測れる事業ではない。地元住民の安全・安心を最優先に考えるなら、少なくとも大型車両が余裕をもって行き交える道路幅の確保、交差点改良、進入路の再設計など、動線全体を見据えた対策が不可欠である。

もう一つ、見過ごされがちだが極めて重要なのが、ゴミ収集車の運転手を巡る問題である。

多くの住民は、ゴミ収集車を「役所の車」「役所指定業者の車」と捉え、どこか公務員的で安定した仕事というイメージを抱いている。しかし、実際の現場は決して余裕のある体制とは限らない。人手不足、高齢化、長時間労働といった課題を抱えながら、地域の生活を支えているのが現状だ。

これまでは、町内や近隣地区を巡回する比較的短距離の運転で済んでいた業務が、今後は諫早市まで片道1時間前後の長距離運転を伴うことになる。山道、幹線道路、交通量の多い市街地、高速道路の利用など、運転環境は大きく変わる。

高齢化が進む中、これまでと同じ人員、同じ勤務形態のままで、本当に安全が確保できるのか。事故が起きてからでは遅い。

運転手の世代交代を計画的に進めること、長距離搬送は専門の運送事業者(いわゆる緑ナンバー業者)に委託すること、あるいは地元収集と広域搬送を分業化することなど、検討すべき選択肢は複数あるはずだ。

ゴミ処理は、いわゆる3K(きつい・汚い・臭い)の代表的な仕事であり、現場の負担は外から見える以上に大きい。筆者自身、近所を走る程度ならともかく、毎日1時間以上の運転を強いられるとなれば不安を感じるし、狭い場所での車庫入れや後退作業一つを取っても、相当な神経を使うことは想像に難くない。

広域処理施設は、環境面・コスト面から見て、時代の要請であることは間違いない。しかし、施設完成という「見える成果」の陰で、集積場周辺の地域リスクや、現場で働く人々の負担が置き去りにされては本末転倒である。

行政には、「効率」や「数字」だけでなく、「現場」「住民」「働く人」という視点を、もう一段深く持ってほしい。

全国各地で同じ轍を踏まないためにも、今こそ足元の問題に光を当て、丁寧な議論を積み重ねるべきではないだろうか。筆者は南島原市出身なので、郷愁の念から、老婆心で書いて見ました。



諫早市の大久保潔重市長



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