東北大の研究費名目で 2億を失った社長の悲劇

(敬天新聞令和8年3月号 1面)



共同研究の甘言

 2020年7月9日、東北大学大学院医学系研究科(宮城県仙台市)は、(株)Fam´s(以下F社・東京都渋谷区)と、少子高齢化先進国日本の持続的な社会の成長発展に資するため「母子ヘルスケア医科学共同研究講座」を設置したとするプレスリリースを公開した。

「産婦人科学、胎児病態学、神経科学、情報工学(AI)などを専門とする教授2名、客員教授2名、講師1名が所属する」ことや「講座では、母体と赤ちゃんの関係に注目し、胎児期からの愛着形成について研究を進めるとともに、新しい愛着ケア法の構築も行う」としている。

 この発表から5年が過ぎた今般、弊紙には、東京大学の教授だった井原某に紹介された東北大学特任教授の根本某に騙されて、研究費名目で2億円あまりを損失したという悲痛な叫びを書き記した5頁に及ぶ告発文が届いている。

告発者は、東北大学と共同研究講座に取り組んでいたF社の吉田社長である。吉田社長の言い分を要約すると以下の通りである。

(1) 2018年頃、当時東京大学教授だった井原氏から「東北大学なら実現できる」との説明を受け、東北大学の根本氏を紹介された。この紹介は偶然ではなく、最初から資金拠出を目的とした誘導だったのではないか。井原氏には、業務委託費名目で合計約1420万円を支払ったが、実体のある業務が確認できないとして詐取と主張。

(2) 根本氏(東北大副理事・首席URA)らから医学的エビデンスの構築・学会発表・国の大型プロジェクト(COI-NEXT等)への接続が可能と説明された。約3年間・総額約1億円規模の共同研究講座契約を締結。しかし実際には研究がほとんど進んでおらず、拠出済み約6720万円のうち508万円しか残っていなかったと説明を受けたと主張。返金後に提案された「新しい研究」も、契約目的を果たさず放置されたと主張。

(3) スーパーシティ構想、COI-NEXT、各種アクセラレーター、休眠預金事業など、次々に話が切り替わり、その都度追加支出を求められたと主張。IPО(上場)や投資家紹介を通じた資金調達の話も持ちかけられ、「まずは自社資金を出す必要がある」と説明された。

(4) 東北大との連名特許費、顧問・アドバイザー料、アプリ基盤開発費などとして約1億5千万円規模を自己資金で負担したと主張。支払い先は根本氏関係者の会社が中心で、根本氏本人への資金還流があったのではないかと疑う。

(5) F社アプリがCOI-NEXTに参画したと認識していたが、実際には必要書類・費用が提出されていなかったと後に知らされた。根本氏からは「強化費部分のみの参画」「国の予算は別用途に使用」「COI参加の影響は大きくない」など、従来説明と異なる説明を受けたと主張。その一方で、東北大学側が別のアプリ開発を進めているとして、「大学が国の予算獲得のために利用されたのではないか」と感じた。

(6) 直接の支出は、約2億円、機会損失を含めると5億円規模に相当するとの認識。




F社吉田社長の5頁に及ぶ告発文



教授の言い分

 これらの主張を基に、弊紙は東北大学の根本氏に書面にて取材を申し入れたところ、本人から19頁にも及ぶ回答書が届いた。

根本氏は、先ず吉田氏に会った印象として、スキンケア商品を大手百貨店などで、あわあわ体操というベビーマッサージイベントの開催を通じて販売し、ユーザー(母親)からの評判が良いこと、少子化時代に正しい育児の啓発に力を入れるため様々な活動をしていることに大変好感を持ち、手伝えることがあれば協力支援するという感情を持ったとしている。

そこで大学との共同研究で「母子愛着形成」を科学的に可視化して、赤ちゃんへのタッチケアの重要性を示す医学的エビデンスを取得する研究を提案したそうである。

共同研究講座を始めるにあたり、大学の審査もあり、科学的データを得る必要があることから、様々な金銭的負担が生じることを、吉田社長に伝え承認を得たとしている。

紙面の都合上、詳細は書けないが、問題は、吉田社長が必要に応じて投じた資金が適切に使われて、実態の伴った成果として、表れているかである。

吉田社長の認識は、大金を払ったのに「何も得られなかった」である。対して、根本氏は、「2億円は社長の経営判断で捻出したもの」「吉田社長との研究開発は続いている」

「事業の立て直し・再チャレンジをお願いしたいと考えている」とした上で、風評により、その機会をなくすことの無いようにと記している。

いったい何処でどう齟齬が生じたのか? 改めて内容を精査して報じることにする。

奇しくも、警視庁が1月、東京大学大学院医学系研究科教授の医師を収賄容疑で逮捕した。民間との皮膚治療の共同研究をめぐって、研究を進めるための講座の開設や運営に便宜を図ったことへの見返りとして、高額な接待を受けていたという。この共同研究は、2023年より進めていたが、現在は契約が解除され研究は中断されており、共同研究相手側が、再開や約4200万円の損害賠償を求め、逮捕前の2025年5月に提訴していた。

 国立大は国の運営費交付金が削られ、民間と研究を進める産学連携によって民間資金を得る手段をとっている。国立大の教職員は「みなし公務員」にあたるため、不当な金品の提供を受ければ罪となるから、同業同種の立場にある者は、注意が必要だ。

 何れにせよ民間事業者は国立大との共同研究には気をつけよう。



19頁に及ぶ東北大学根本教授からの回答書



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