(敬天新聞 令和8年6月号3面)
| 投資家への説明責任 |
弊紙は、ANAPホールディングス(以下ANAP)を舞台とした「暗号資産型・資金環流モデル」の疑惑について全貌を解明すべく四回に渡って報じた。
前回までに判明した構図について内容を要約すると、ロシア人投資家ヴィタリー・ベズロドニク氏に関連するビットコインが、Bitfinex(日本未登録取引所)→ Suntan Properties Ltd.(バハマ法人・タックスヘイブン)→ フルグル合同会社(川合林太郎氏が職務執行者)→ キャピタルタイフーン(宮下直也氏が代表)という経路をたどり、ANAPへ約80億円相当のBТC(ビットコイン)現物出資として流入した疑惑を指摘した。
そして赤坂二丁目14番11号の同じフロアに、イフィネクスジャパン(川合)、キャピタルタイフーン(宮下)、シグナルタイフーン(宮下)、クロノス・キャピタル合同会社(山本和弘)の4社が密集し、増資を決議する側と引き受ける側を同一人物群が兼務する「持ち回り支配」の構図を明らかにし、この資金ルートの「着地点」に踏み込んだ。
登記情報に基づき見えてきたのは、BH Tokyo(川合氏が代表取締役CEO)が2024年12月、東京都新宿区四谷本塩町の不動産を取得。売主側にはきらぼし銀行の4億9000万円の抵当権設定仮登記があったが、売買と同時に解除。一方で買主側には担保設定も融資の痕跡もない。新設法人が無担保で数億円規模の不動産を取得した。その資金源は登記上、完全に空白だったということである。
さらに、取締役経営管理本部長・根岸良直氏がユニバーサルエンターテインメント時代に約20億円の資金流出問題の渦中にいた人物であること、後任監査法人として選任されたハイビスカス監査法人が2013年・2023年に金融庁から行政処分を受け、2025年9月には日本公認会計士協会から懲戒処分(戒告)を受けていたことを報じた。監査調書の事後作成・差し込みという監査の根幹を揺るがす不正が認定された監査法人だったのである。
本稿からは、新たに判明した事実として、四谷への法人集中、ТBBテナントとIRの自作自演構造、「EUROCLEAR」名義の謎の大量保有、そして経済安全保障上の重大リスクを連載で報告していく。
川合林太郎氏(カスペルスキー日本法人の代表当時)
| 虚偽開示の疑い |
2026年2月27日、ANAPは「主要株主の異動に関するお知らせ」を開示した。株式会社キャピタルタイフーンが保有していたANAP株式の23・91%が、合同会社四谷デジタルイノベーターズに譲渡されたという内容だ。
同社の登記簿を確認したところ、所在地は東京都新宿区四谷三栄町1番1号。設立は2025年12月17日。資本金はわずか100万円。代表社員は吉谷寛之氏と成っている。
資本金100万円で設立からわずか2ヶ月の合同会社が、上場企業の発行済株式の約4分の1を取得したということだ。
ANAPはこの開示で、四谷デジタルイノベーターズを「主要株主」と表記した。ところが6日後の3月3日、「その他の関係会社」への訂正を発表する。 それは何故か?「主要株主」では川合社長との人的関係を開示する義務が生じるからだ。つまり「その他の関係会社」に格下げすれば、その説明義務を回避できる。開示上「人的関係なし」と出来るということだ。
だが実態は違う。吉谷寛之氏は、カスペルスキー日本法人(株式会社カスペルスキーラブスジャパン)の情報システム担当者であった。同社ドメイン「kaspersky.co.jp」のJPNIC Whois情報において、「Administrative Contact」及び「Technical Contact」として吉谷寛之の氏名が登録されている(JPNIC Handle: HY7363JP)。
川合林太郎氏はその同じ会社の代表取締役社長だった。同じ会社で働いていた関係を「人的関係なし」と記載する。この開示は虚偽ではないのか。
| 実質株主不明 |
2026年3月9日、ANAPは「主要株主の異動に関するお知らせ」をもう一通出した。EUROCLEAR BANK SA/NV(ユーロクリア銀行)が発行済株式の11・48%を保有しているという内容だ。
EUROCLEAR BANKはベルギー・ブリュッセルに本拠を置く国際証券決済機関(CSD)であり、日本では2017年に金融庁から外国銀行支店ライセンスを取得している。正規の国際金融インフラだ。
だが問題なのは、EUROCLEARは名義人(ノミニー)として株式を保有する機関であり、その背後にいる実質的株主(ベネフィシャル・オーナー)の名前は開示されていないという点だ。
ANAPの開示資料には、EUROCLEARの保有目的について「純投資」とも「支配目的」とも記載がない。大量保有報告書(5%ルール)の提出も確認できない。つまり、上場企業の11%超を握る実質株主が誰なのか、投資家には一切分からないのである。
四谷デジタルイノベーターズの23・91%と合わせれば、この2者だけで発行済株式の35・39%を占める。一方は資本金100万円の合同会社、他方は名義のベールに覆われた国際決済機関。既存株主は、自分が投じた金が誰の支配下に置かれているのかすら分からない状態で放置されている。
吉谷寛之氏(カスペルスキー日本法人のIT部長当時)
| 実質株主不明 |
2026年3月9日、ANAPは「主要株主の異動に関するお知らせ」をもう一通出した。EUROCLEAR BANK SA/NV(ユーロクリア銀行)が発行済株式の11・48%を保有しているという内容だ。
EUROCLEAR BANKはベルギー・ブリュッセルに本拠を置く国際証券決済機関(CSD)であり、日本では2017年に金融庁から外国銀行支店ライセンスを取得している。正規の国際金融インフラだ。
だが問題なのは、EUROCLEARは名義人(ノミニー)として株式を保有する機関であり、その背後にいる実質的株主(ベネフィシャル・オーナー)の名前は開示されていないという点だ。
ANAPの開示資料には、EUROCLEARの保有目的について「純投資」とも「支配目的」とも記載がない。大量保有報告書(5%ルール)の提出も確認できない。つまり、上場企業の11%超を握る実質株主が誰なのか、投資家には一切分からないのである。
四谷デジタルイノベーターズの23・91%と合わせれば、この2者だけで発行済株式の35・39%を占める。一方は資本金100万円の合同会社、他方は名義のベールに覆われた国際決済機関。既存株主は、自分が投じた金が誰の支配下に置かれているのかすら分からない状態で放置されている。
| 構造的な罠 |
2025年12月1日、ANAPは「上場維持基準(流通株式比率基準)への適合に向けた計画(改善期間入り)」を開示した。
東証スタンダード市場の上場維持基準は、流通株式比率25%以上。ANAPはこの基準を満たせず、改善期間に入った。改善期間は原則1年。この間に基準に適合しなければ、監理銘柄に指定され、さらに整理銘柄を経て上場廃止となる。
なぜ流通株式比率が基準を下回ったのだろうか? 答えは明白だ。
四谷デジタルイノベーターズが23・91%、EUROCLEAR BANK名義で11・48%。この2者だけで発行済株式の35・39%を占める。四谷デジタルイノベーターズは川合社長の元同僚が代表を務める資本金100万円の合同会社であり、市場で売却する主体ではない。EUROCLEARの背後にいる実質株主も不明で、その株式が市場に流通する見込みがあるのかすら分からない。
さらに取締役会メンバーや関連法人の持分を加えれば、発行済株式の過半が実質的な固定株として市場から消えていることになる。
株式を身内で固め、市場に流通させない。その結果、東証の上場維持基準に抵触した。これは偶然ではない。弊紙が前号で報じてきた「持ち回り支配」の構図が、株式の流動性そのものを殺しているのだ。
そしてここに、さらなる矛盾がある。ANAPは流通株式比率が足りないと東証から指摘される一方で、МSワラントによる大量の新株発行を繰り返している。既存株主の議決権を希薄化させながら、流通株式比率は改善しない。
つまりМSワラントで発行された株式すらも、最終的には特定の関係者の手に渡っている可能性がある。希薄化の被害だけが一般投資家に押し付けられ、流動性は一向に改善しない。
この構造は、日本の個人投資家に対する搾取以外の何物でもないだろう。
2026年3月13日、ANAPは第9回新株予約権(МSワラント)の発行を開示した。割当先はEVOFUNDである。行使可能株数は5000万株。当時の発行済株式総数4352万4000株に対し、潜在希薄化率は114・88%に達している・・・次号に続く。