労働基準法改正と人材派遣アンツ「残業割増編」

2008/12/13

現在でさえ深夜残業代は50%割増なのに

 しかし、労働基準法に従えば法律上の上限である「8時間」を超える分、「15−8=7時間」は残業分割増賃金を支払わねばならない。そうすると労働者を15時間こき使えば8時間は時給1,000円、残業の7時間分は時給1,250円支払う事になる。8時間を超えて以降は1時間につき250円(25%)のキツイ残業手当が本来ならのしかかってくる。

 さらにである。上記の通り、残業割増賃金と同様に深夜割増賃金というものもある。

 残業割増と深夜割増は同じく25%以上の割増賃金を払わなければならないが、それが重なると「残業割増を払うから深夜割増を払わなくていい」のではなく、「残業割増も深夜割増も両方」支払わねばならない。
 つまり、現時点でさえ「深夜残業割増は『50%』割増」のハズなのだ。

 これが4月には残業代だけで50%UPなのだから、深夜割増をまともに払ったら……南無阿弥陀仏。

 だからアンツがもし午前9時から単純に15時間、佐川急便に労働者を派遣したとすると「佐川急便→アンツ」への支払いは一律1,330円と変らない。
 なのにアンツから派遣労働者への支払いは、単純計算で切り詰めても夕方6時以降は残業割増時給1,250円、夜10時以降は深夜残業割増1,500円の時給を労働者達に支払わなければならないのだ。

 今、現在でさえも、労働基準法に従えば、アンツは佐川急便から受けている1,330円以上の時給分を赤字覚悟で違法派遣している労働者達にしはらってやる義務を背負っているのだ。

 4月以降の深夜残業代を考えれば、アンツ長尾も「アンツネクストを倒産させたからOK!」なんてのん気に構えていられないはず。

労働基準法割増賃金改正は…凶と出る気がしてならない

 アンツグループが労働基準法に従うのなら、まず、支払いが1,330円と決っている佐川急便の仕事は取引停止しなければ、もしくは労働者を8時間だけしか働かせない事にしなければ立ち行かなくなる。
 一人の労働者にどれだけ長時間作業をさせるかが効率化の鍵である運輸業界で、そうそう8時間程度で労働者をほいほい入れ替えていたら作業の効率が非常に悪くなるだろう。

 ここばかりはアンツグループばかりが悪いわけではなく、将来を見据えず、人件費のダンピング合戦に突入し、将来破綻するであろう人件費ダンピングで浮いた経費を担保に配送賃料までダンピングしてしまった運輸業界全体の悲劇であると思う。

 そして、現在でさえ労働基準法に従って合法的にやっていけないくらいの低料金で回っている運輸業界に、4月からの月60時間を超える残業時間の割増賃金率を、50%以上に引き上げる改正労働基準法の威力がかかってきたら。

 この50%の残業時間割増賃金は中小企業を直撃しない建前になっているとはいえ、大手に回ってきた50%の割増賃金のツケは中小企業に払わせないわけがない。
 バカバカしくなって営業を中止する請負業者、派遣業者が続出するだろう。

 アンツグループにしても、今後、労働基準法の法律遵守義務はますます厳しくなり監視も厳しくなるから、そうそう残業代未払いなんて違法行為は続けられなくなる。

 アンツグループが更に危惧しなければいけないのは、アンツ代表長尾はアンツネクストを潰した事で大丈夫とタカを括っているのだが、(その他にも遡及される支払い義務はあるが)この残業代未払いも労働基準監督署がその気になれば、2年間以上前に遡って未払い残業代を支払わなければいけなくなるのだ、労基法違反の罰則と同時並行で。なんとも可哀想な話だが。

 アンツ代表長尾は相当いい暮らしぶりのようであるが、この支払いもその他の遡及効のある支払いも全て支払うために今の暮らし向きを変えねばならないだろう。
 何故なら、アンツグループが身銭を切って支払いをしないと、使用者責任ということで佐川急便ほかアンツグループの取引先の全てに、この各種「使用者責任債権」が飛び火する事になるからである。
 何のために今まで商売してきたか分らなくなるかも知れないが。

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